

この本は村上春樹が1987年という今から30年以上前に執筆した本ですが、
古臭いイメージが一切なく、村上春樹ワールド全開の独特の世界に包まれています。
日常を抜け出して村上ワールドに染まりたい!
そんな人におすすめの本です。
この世界観に触れていないあなた!
後悔しますよ
中毒性が強いので、ぜひご注意を!
ネタバレ半分、あらすじ半分で、感想メインですのでご了承ください。
作品の紹介
タイトル:ノルウェイの森
作家:村上春樹
初版発行:1987年9月4日
ページ数:文庫本 2冊 (上巻268Pと下巻260P)
おすすめ度:★★★★★(5つの星評価 ★が多いほどおすすめ)
タイトルの由来:
本書は「雨の中の庭」というタイトルで書き始められた。このタイトルはドビュッシーのピアノ曲集『版画』の中の一曲「雨の庭」(Jardins sous la pluie)に由来する。タイトルは原稿を版元に渡す2日前に変更された。題名に迷った村上が妻に作品を読ませて意見を求めると、「ノルウェイの森でいいんじゃない?」という返答があったという。ビートルズの曲の題をそのまま本の題にするということで、本人は当初気が進まなかったというが、周りの「題はもう『ノルウェイの森』しかない」という意見が大勢だったため今のタイトルとなった。
また、村上自身は著書の中で、「ところでビートルズの“ノルウェイの森”というタイトルが誤訳かどうかという論争が以前からあって、これについて書き出すとかなり長くなります」とだけ述べている。
あらすじ
飛行機でドイツの空港に到着した際、37歳の「僕」が機内で流れたビートルズの曲「ノルウェイの森」を耳にしてしまう場面から物語が始まります。
ノルウェイの森により呼び起された記憶は、長く複雑な青春時代へと遡ります。
「僕」が恋し精神を病んでしまった直子、17歳で自殺した親友キズキ、生気あふれる女の子緑の登場、びっくりするほど優秀で孤独な先輩永沢さんと、その優しい恋人ハツミさん、音楽を愛しながら精神の治療を続けるレイコさん、深い喪失を伴いながら、物語が展開します。
というあらすじがありますが、読んでない人向けの一言だと
「生と死のはざまで、人としての優しさ、同情、欲望に振り回される主人公の葛藤」という感じの内容でしょうか(ざっくり)
作品のみどころ


でも悲壮感だけではなく、その時代背景、言葉の言い回し、
世界観に引きずり込まれること間違いなし!
村上春樹の作品は短編集も入れて、今のところすべて読んでいます。
その中でも、好きな作品ベスト3に入る作品です。
とくにこのノルウェイの森は村上ワールド全開で、あらすじで内容を読むだけではもったいなく、
言葉のいい回し、繊細な情景の描き方、(←これが私は一番好き)
全く理解できない文章、などなど、じっくり読み込むことにこの作品の価値があります。
村上春樹の作品を読んでみたいと思う人には村上春樹の世界観を知る入門書みたいなものだと思っています。
過去に村上春樹が好きだと言ったら、「病んでるな」と言われたことがあります。笑
確かに独特で悲壮感がありますが、これを知ったら他の本は読めないってくらい中毒性があるんですよ。そう思った方はぜひコメントくださいね!
それでは作品の見どころいってみましょう!
主人公「ワタナベ」と「登場人物」との関係
まず、主人公「ワタナベ」と主な登場人物の関係を整理してみましょう。
キズキ
ワタナベの唯一の親友にして、直子とは幼馴染で恋人。笑いの才能あり。
ヤマハの赤いバイクを乗り回す高スペック男子だが、高校3年の5月、直子にも連絡なしに突然自殺。
直子
ヒロイン的な存在。
キズキとは幼馴染で恋人。高校時代にキズキを失ったことで、少しずつ病んでいく。
大学では東京の武蔵野にある大学に進学し、キズキの死後、会っていなかったワタナベと中央線の社内で再開する。
その後、交流を持ち肉体関係も持つようになるが、精神的な病気により京都の診療所にて生活を送る。
診療所ではレイコとともに生活を送り、ワタナベとの交流も続くが、最後は自殺してしまう。
緑
ワタナベと同じ大学で、同じ事業を受講している活発な女の子。
実家は書店を営んでおり、性的な話を好む傾向にある。
ワタナベと知り合った当時は別の恋人がいたが、ワタナベと恋に落ちていく。ある意味直子とは正反対なタイプ。
レイコ
診療所での直子のルームメイト。
38歳という大人の女性で、かつてピアニストを目指してしたが挫折し、3回にわたって精神病院に入院している。
診療所には8年おり、患者たちにピアノを教えている。直子の死後、ワタナベと一度肉体関係を持つ。
永沢
ワタナベが住んでいる学生寮の先輩。
大学はワタナベとは違い東京大学法学部。のちに外務省に入るというハイパースペック。
独自の理論を持ち合わせており、周りの人間を下げずんで見ているとこもあり。
ワタナベのことはかわいがり、一緒にナンパに出かけることも。ハツミという彼女もいるが、二人は結ばれない。
ハツミ
「とびきりのお嬢様が通う」東京の女子大生。
すごい美人ではないが、上品な装いに理知的でユーモアがあり、穏やかな人柄で女性としての魅力にあふれている。
永沢に「俺にはもったいない女」とわせたほどの女性。
永沢の浮気行動にも目をつむっていたが、最終的に分かれて別の男性と結婚するが、のちに自殺する。
この説明で何か感じませんか?
自殺多すぎですよね。。。
そうなんです。
多いんです。
確立1/2くらいです。
村上春樹の本全般にいえることですが、人の死によって変わっていく世界というのが、とてもリアルに描かれています。
割と主人公に近い関係にある人が死んでしまうことで、より心の葛藤が強く描かれています。
直子の変化
直子の変化は物語の序盤から始まり、終盤まで続きます。
この変化がまさにこの「ノルウェイの森」の主軸といってもいいでしょう。
直子もキズキという唯一無二の存在を失った被害者でもありますが、
この変化に主人公の生き方や考え方は大きく影響を受けているように感じます。
直子目線でざっくり話をすすめてみると、(あくまで私の感想)
・幼馴染で面白いキザキとこの後もいるのかな。
高校生だしまだまだ分からない。肉体関係も望んでいるところはあるけど、なぜかキザキとうまくいなかにんだよね。。。
・突然キザキが死んでしまった。。。
実は私を取り巻く環境は全てキザキでなりなっていることに気が付いた。喪失感を超えて、「私」という意味を考えされられる。
・何気なくすすんだ大学生活で、ワタナベに出会う。
ワタナベの中にキザキを見つけた気がする。もちろんそんな付き合いは申し訳ないし、キザキより好きになる努力をしよう。
・初めてワタナベと結ばれた日から私の精神状態はさらに悪化したように思える。
キザキとできなくて、ワタナベとできたということの意味も考えてしまう。
考えてもしょうがないのだけど、キザキのことを考える時間もどんどん増えてくように感じる。
・とうとう精神診療所に入ることになった。
ここではレイコさんが楽しく毎日をすごさせてくれる。だけど、心の喪失感は埋まることはない。
ワタナベが会いにきてくれてとてもうれしい。私の大事な人だと感じる。
ただキザキのことはやっぱり忘れられない。。。このやさしさと私の想いは一致することはないと思う。
このままだとワタナベの人生を壊してしまうかもしれないし、私が生きる意味は高校3年から失ったままだ。。。
という流れじゃないでしょうか。
精神病の介護って正直かなりつらいとことがあります。かなり辛辣なこと言って本当にすみません。
報われないことの方が多いし、先が見えない時もある。
病気をわずらっている人も「私が負担になっている」という想いがさらに、病気を悪化させてしまうこともあります。
やさしさがうまくかみ合わない時もあるんですよね。。。
本編も直子の変化に主軸をおいて読んでもらうと、周りの人の葛藤もより強く感じることができると思います。
二週目いってみようかなって人は色んな目線で読んでみて下さいね!
主人公が最後にたどり着いた場所
本作品の最後の最後です。
緑へ電話をして「最初からはじめたい」と言います。
「君以外求めるものはないよ。愛してる」と伝え、緑と2人で未来へ進む決断をしました。
緑が求める言葉でした。緑は喜んで「今どこにいるの?」と質問します。
それに対し、「ぼくはいま、どこにいるんだろう」とワタナベは考える。
ぼくはいま、どこにいるんだろう
私はこの作品を初めは本で、後に映画でみています。本を読んだのは2008年頃ですが、この最後の一文に鳥肌がたったのを今でも覚えています。
私は初めて読んだときに、ワタナベはすでに死んでいたのではないかと思いました。
それくらい一言で、衝撃を与える文章でした。
それぞれ読み手にとって解釈があると思いますが、すべてを読み終えた後、あなたがこの文章に対してどう考えるか。
ぜひ聞いてみたいものです。
まとめ
本が発行してからかなりの年月が経ちますが、いまだに人気のある作品です。
本で読むのがめんどくさいという人は映画もありますので、ぜひ一度みてみてください。私的には菊池凛子が演じる直子はイメージ通りで感動しました。
あと、村上春樹の本すべてに言えることですが、名言がとても多いです。
「死は生の対極にあるのではなく、我々の生のうちに潜んでいるだ」
「ぼくはいま、どこにいるんだろう」
一言だけでかなり考えさせられたものです。
私の評価の中では間違いなく★5つです!
気になる方は、ぜひアマゾンサイトから購入してみて下さい。間違いなく面白いし、損はしませんよ。